Buenos Aires – Y cuarto, menos cuarto Vol.2
春
ブエノスアイレスに春が来た! はずだった・・・。
9月21日 春分の日(本当は9月22日だったのだが、今年は学生の日の祝日と重ねてしまったらしい)。毎年、この日はあちこちで”春の日、おめでとう!”の声が聞かれ、街行く人の手に花束を抱えてる姿が数多く見受けられる。私はこの日がとても好きだ。春がス〜ッと身体の中に入って来て、昨日と同じはずなのにフワッと心も身体も軽くなる気がするのだ。
今年もその日がやって来た。春の幕開けだ。が・・・ 今年のその日は、朝から大雨。おまけに雷までなっているではないか! 冬のように寒く、皆厚いコートに身を包んでいる。街行く人に花を抱えた人は一人もなく、花屋の店先に並んだ花達は、雨の中、ただひたすら買ってくれる人を待っていた。“春の日おめでとう”の声は、とうとう聞く事がなかった。
春の日には、一気に花の数も種類も増える。私がブエノスアイレスに来た頃、すぐ近所に大きな花市場があり、煌煌と電気が灯る夜中から朝方まで仕入れ客で賑わっていた。2003年、この花市場の移転が決まり、跡地をある宗教団体が買い取り教会へと変わった。市場周辺で営業していた小さな花屋のいくつかが残り、今も営業を続けている。この花達、その大半を栽培しているのはなんと日系人なのだ。アルゼンチンに移民して来た日本人の主な職業が、市内ならクリーニング店、郊外なら花弁農家がほとんどだった。毎年春になると、市内から60キロ離れたエスコバールという所で花祭りが開催される。私も行った事があり、とても懐かしい気持ちになった。というのも、咲き乱れる花々が日本人の私にとって馴染みのあるものが多かったからだと思う。つつじ、テッポウユリ、紫陽花や菊。ずいぶん前、まだ子供たちが小学生だった頃、「おめでとう!」と私の誕生日に花束をプレゼントしてくれた。小さな子供二人で頑張って花屋まで行って買って来た努力はとても嬉しかったけれど、贈られた花に何と言っていいか分からず・・・。全部白い菊の花。私の中では、白い菊イコールお葬式。どうして沢山の花の中からよりにもよって菊を選んだのか・・・。