19.Sep.2017

ウルグアイ映画 『ドス・オリエンタレス』

2人の女性監督にインタビュー

 ウーゴ・ファットルーソとヤヒロトモヒロ。ウルグアイと日本。ラテンアメリカとアジアというまったく異なる文化圏からやって来た2人のミュージシャン。共鳴しあう彼らが音楽を通して出会い、誰にも真似できない強い絆を築いていく過程を描く心温まる音楽ロードムービーだ。ウルグアイ出身の監督は撮影のために2回来日し、このたびアジア最大級のラテン映画フェスティバルであるラテンビート映画祭2017でこの映画『ドス・オリエンタレス』が上映された。このドキュメンタリーを作るにいたった経緯や逸話を2人の女性監督(ソフィア・カサノバ、ソフィア・コルドバ)に語ってもらった。

-この映画を撮ろうと思ったきっかけは?

ソフィア・カサノバ&ソフィア・コルドバ ウーゴ・ファットルーソの友人で一緒に仕事もしていたフロレンシア・アルビサから話があって。たまたまトモヒロがウルグアイにくる事があって、フロレンシアがライヴを撮影する仕事があるからと呼んでもらった。そこからドス・オリエンタレスのふたりを知ることになって、名前からして面白いと思ったし、多くのアイデアが浮かぶようになって、最終的に映画を撮るにたどりついた。

 

-初めてライヴを観たのは? ふたりにはそこで出会ったのが初めて?

ソフィア・コルドバ 2013年の3月で、2月にアイデアが浮かんでいてライヴは翌月に迫っていた。ウルグアイでふたりのツアーがあって、モンテビデオの空港にトモヒロが着くシーンから映画は始まる。実はトモヒロにはあったことがなかったけど、でもとりあえずカメラを持ってね(笑)。

-最初は映画を撮るつもりはなかったのが、ドキュメンタリーを撮るようになったんですね。長いプロセスだっだでしょうね。

ソフィア・コルドバ 実際、最初に撮ってから先に進めてみようと決めるまで1年ほどかかった。素材を集めて、編集するための資金を集めて…アイデアを出し合ってね。1年後にやっと「映画を作ろう」ということになって、そこからハードワークが始まった。毎日、何千と積もるこの映画の仕事に取り組むように…。最初はスペースもなかったからリビングに集まったりしてね。

 

-ウルグアイと日本という対照にある国を知って、類似点もみつかりましたか?

ソフィア・コルドバ 同じ人間ということで類似点はあると思うし、つながりあう点は必ずあると思う。特に音楽は全世界の人がつながりあう言葉で基礎にあるものだから。ノスタルジックなところや優しさという点では日本と似たところもあるかもしれない。

ソフィア・カサノバ パンチート(西村秀人准教授)がいうように、感情面では特に…。ウルグアイに来てこの国に惚れる人は「優しくてすぐ人を家に招いてくれる。尋常ではない優しさだよ」なんていってくれる。

-その類似点なしでは「ドス・オリエンタレス」というデュオはありえないでしょうね。ヤヒロさんはカナリア諸島に住み、スペイン語を話すという点で典型的な日本人ではないというところも大いに関与しているでしょうね。

ソフィア・コルドバ その点ではウーゴも典型的なウルグアイ人とはいえない。ウルグアイのフォルクローレを演奏してきているし音楽的・文化的にすごくウルグアイ人らしいところもあるけれど、人間性や仕事の仕方はウルグアイ的ではない。ウーゴは全世界を旅してきているし、ウルグアイ以外で生きた経験も大きい。

ソフィア・カサノバ ふたりとも前衛的ね。

-ヤヒロトモヒロさんはラテン的なものがあり、ウーゴは日本的な側面があるという面白い組み合わせですね。

ソフィア・カサノバ ウーゴを近くで知る機会はなかったし、トモヒロのことも知らなかったのでプロジェクトを通してわかるようになった驚きね。映画の中では2人とも自分自身については語っていない。実際にしゃべってみてもほかの人のことや違う場所のことばかりね。他の人のことを語るほうが心地よいみたい。

ソフィア・コルドバ 『ドス・オリエンタレス』というタイトルのとおり、その興味深い発見がこのプロジェクトを力づけていったと思う。

Directora Sofía Córdoba

-おふたりとも日本に行ってみて監督自身で考え方が変わったなということはありますか?

ソフィア・カサノバ 日本は自分にとっての指標だと思う。日本の秩序、敬意の念…

ソフィア・コルドバ クリエイティヴな視点からいっても、そうね。ウルグアイではコネや外に働きかけることが大事で、ここでは多くのエネルギーを要する。ウルグアイ人というのはヨーロッパ、アフロ、グアラニーといった多くの人種の混交だし、カーニバル的といってもいいかもしれない。映画のオープニングイベントでは寿司とパンチョのつまみなんてだしても面白いかもね。

Directora Sofía Casanova

-ウーゴの音楽にはロス・シェイカーズ、OPA、ソロ、ドス・オリエンタレスといった様々な時代がありますが、音楽的に好きだなという時代は?

ソフィア・カサノバ 今のウーゴの音楽がモダンだし、自分にしっくりくる。経験がリミックスされて、トモヒロのパーカッションと交わると音楽とふたりの人生が交わってきて、すばらしいと思う。

-日本人はウルグアイのことをどう思っていると想像しますか?

ソフィア・コルドバ カオティックだと思う。日本は秩序だっているからね。でもウルグアイもトモヒロがいうように人間が温かく、感情が交わりやすい気質があると思う。ラテン系によくあることだろうけど、ウルグアイ人はすぐに仲良くなりやすい人たちね。

-それこそが映画に現れているものですね。

ソフィア・コルドバ 友情、それこそが映画を作るうえで私たちと日本の間に生まれたものだし、映画が私たちに与えてくれた絆ね。

Directoras Sofía Casanova – Sofía Córdoba

当映画はラテンビートフェスティバル 2017 にて上映された。

詳細:http://lbff.jp/