30.Apr.2018

セルカン・イルマス ~ 10弦ギターの怪物

―影響を受けたアーティストや音楽を教えてください。

セルカン 影響を受けたアーティストは世界中に数多くいて深く敬愛しています。日本にもたくさんいますがたとえば武満徹の音楽との出会いは衝撃でした。聴いた瞬間に自分との共通点を見出しました。世界にはインスピレーションを与えてくれる素晴らしい音楽が散りばめられていますね。

 

―ご自身の音楽を演奏家、作曲家としてどういった音楽ジャンルの中でとらえていますか?

セルカン わたしの音楽は常に挑戦です。ジャンルを特定することはできませんパーソナルではありますが、まったく新しい音楽を作っているわけでもありません。ジャズやクラシックの中に分類することは難しいため、ワールドミュージックという人もいますが、その文脈で扱うのも少し無理があります。ワールドミュージックは特定の音楽ジャンルを指さないからです。全世界の音楽をそう呼ぶことになっていまいますからね。
 大事にしているのはジャンルではなく自由さです。自由さこそが音楽の根底にあると思っています。

 

―大抵のギターは6弦なんですが、セルカンさんのギターは4弦多く、10弦です。その特徴や4弦増えることでどういったことが可能になるか教えてください。?またチューニングも特別なんでしょうか。

セルカン 元々クラシックギターを弾いていてラテンアメリカに来た頃ブラジル音楽にはまり7弦ギターが多用されるショーロを演奏するようになりました。弦が増えることでさらにショーロの演奏と作曲に適していますからね。その後10弦ギターが演奏されているのをみました。クラシックではかつて一般的だったものです。
 工房に特注し、フレットを3つ多く作ってもらいました。普通の10弦ギターはここで切れるのですがフレットが増えることによってチューニングも変えることができますし、ハーモニーにも厚みが生まれます。この3弦はチューニングも異なって4つの低音は7弦目がシ、8弦目がラ、9弦目がソ、10弦目がミでチューニングします。かなりの低音なので半音上げたり下げたりは可能です。
 こうしてギターとベースが一体になったようなハーモニーができます。また低音弦は高音を弾いてもナチュラルな響きをしてくれ、わたしの音楽にぴったりあってくれます。

 

―最新作の『Suite Galáctica』の内容について教えてください。また最新のプロジェクトなども。

セルカン 『スイート・ガラクティカ』はできたての最新作で特別な作品です。というのもライヴの中で即興で作曲していったからです。ある程度のアイデアはありましたが、その後ライヴの中で発展させていき、その後は次のライヴまで演奏しませんでした。10曲全曲太陽系の惑星の名前がついていてタイトルもギリシア・ローマ神話に基づいています。
 次のプロジェクトはゆっくり考えていますが、頭の中にはギターソロでトルコ音楽を弾くことがありますね。でも大体の構想はできているので録音を楽しみにしてます。

 

―2回目の日本ツアーになりますが最初の経験はいま振り返ってどういったものですか。そして今回のレパートリーは。

セルカン 2015年に初めて日本に行き素晴らしいケーナ奏者の岩川光さんと10ヶ所ツアーしました。素晴らしい経験でお互いのオリジナル曲を披露しました。特に日本人の細やかな気遣いに驚きました。さらにアルゼンチン音楽について深い知識を持っていますし、気遣いや優しさが心に残っています。
 今回は一人で4つの街を回り5か所でライヴを行います。オリジナル曲やトルコやアルゼンチンの音楽も披露し、特別ゲストも迎えます。敬愛するチェロ奏者の五十嵐あさかさんとギターのマエストロ鈴木大介さんもご一緒いただけます。日本のみなさんと、この音楽をシェアできることを楽しみにしています。

 

『SUITE GALÁCTICA 』 Serkan Yilmaz (Entrevista) (Türkçe altyazılı)
CDアルバムは Spotify, iTunes, Google Music, Deezer などでお聴き頂けます。
公式サイト www.serkanyilmaz.com.ar
Facebook  https://www.facebook.com/serkanyilmaz…

映像撮影・編集  Gonzalo Bubillo vimeo.com/gonzalobubillo
インタビュアー  Hiro Nori
ギター制作者  Julian Ovcak (Ovcak Guitars)
プロダクション  Otras Músicas

2018年4月 ブエノスアイレスにて