アルゼンチン北から届いた音楽
チャコ発 2枚のアルバム
ラ・チャロ – チャコ州 レシステンシア –
もしも、密林からの出口を見つけた時のような空に鳴り響く声を聞いたことがあるならば、その声の持ち主はチャロ・ボガリンだろう。1972年、クロリンダ(フォルモーサ州)生まれ、チャコ州の首都レシステンシア育ち。社会コミュニケーション大学で学んだのち、チャロは7年間レシステンシアの日刊紙2社でフォトジャーナリズムに携わった。だが、90年代の後半にその暮らしは一変する。新たな表現手法の魅力に取り憑かれたのだ。それが音楽だった。いつだったか、彼女はこう言った。「私はその時ジャーナリズムを諦めたんです。でも常に音楽を通してそれを追求してきました。」
彼女が見つけた新しい居場所はトノレックというデュオで、ディエゴ・ペレスが主にエレクトロニックサウンドのパートを担当している。当初はポップス路線を好んでいた彼らだったが、チャコ州の先住民が崇拝する鳥の名前トノレックに由来するデュオ名のように、次第にトバ族の音楽ルーツを取り入れるようになり、古来と現代の二つの世界の融合を曲作りに取り入れるようになった。
様々な作品を発表した後、現在は先住民の人々の様々なコミュニティの暮らしをマナ・ガルシア監督の多角的な視点を通して、過去や古くから伝わる歌を織り交ぜたドキュメンタリー「エル・カント・デ・ラ・ビダ」(2019)という、作品の制作に専念している。一方で、トノレックも決してステージを降りたわけではない。8月の中旬から古巣のチャコで開催される「デジタルブックフェア」でストリーミング形式でライブを配信したのだ。
また、チャロは数年前からソロとして華々しい活躍を見せてきた。ここ最近では偉大な歌手メルセデス・ソーサへのオマージュである、2作目のソロアルバム「レガード」(2019)が2020年ガルデル賞の「ベスト・オルタナティブ・フォルクローレ部門」にノミネートされている。また、最新リリース曲の「ソプロ・デ・ヒラソレス」はストリーミング配信され視聴することができる。
チャロはこのように語っている。「今年は今のところ”エスパンタパハロス”というデジタルプラットフォームのネットワークに3曲をアップロードしました。この3曲は私の3枚目のソロアルバムに収録される予定です。<カント・デ・アモール>と<ロ・ケ・テンゴ>は様々な段階にある愛をテーマにしていて、<ソプロ・デ・ヒラソレス>は地球環境やそれを取り巻く世界について歌っています。この楽曲を通して、私たちが引き起こした環境問題について見つめ直すべきである、ということを提言しています。私は、愛があればあらゆる問題も解決できると信じています。」
外出自粛期間について聞くと、チャロははっきりとこのように語った。「この監禁生活により、音楽家/歌手としての活動はインターネットを介することがメインとなりました。」私は自分のいる場所から人々とこの困難な状況を共に分かち合うことができました。Facebookやインスタグラム を通して毎週のようにストリーミングでコンサートを実施しました。」さらに8月8日には「ウン・カント・ア・ラティノアメリカ」という初のバーチャルコンサートを開催した。
チャロは、自身のルーツや先住民族の文化を復興させる稀代のアーティストなのである。
楽曲の視聴はこちらから:https://spoti.fi/2D8nJvl
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ルカス・モンソン – チャコ州 レシステンシア –
若きルカス・モンソンは、チャコ州の首都レシステンシアからアコーディオンを通して世界で活動している。この外出自粛期間、彼はこの威厳ある楽器が持つ大いなる可能性を追求することに邁進した。「自粛期間中はずっとこの場にいました。何もかもが困難だったのは確かですが、延期されたプロジェクトの準備や生徒たちの資料作りなどに専念しました。」彼はこのように述べた。
これまでに『フランコ』(2018)、『ノクタンブロ』(2013)、『ベルデ・プロフンド』(1998)の3作品を世に送り出してきた。現在活動している”ルカス・モンソン・クアルテート”ではフリオ・ロメロとレオ・ロドリゲスがギターとヴォーカルを、ティト・ルケがバンドネオンで、モンソンがアコーディオンとグループのディレターを担当している。
-音楽仲間たちと、作曲やアレンジなど音楽の楽しさを同じ空間で共有できないことにどう感じていますか?
モンソンは次のように語っている。
「アルバム<フランコ>では、様々なシーンで演奏しながら観客の皆さんとその場を共有するということを繰り返してきました。これはとても重要なことです。私が作曲した楽曲の多くは、落ち着いた自宅の空間で生まれましたが、それを人々の前で演奏するたびに変化が生まれるのです。音楽が融合し、響き合う時、常に異なった形を作ります。それぞれが独自の世界を有し、その体験こそが心を豊かにするのです。」
モンソンはこの外出自粛期間中に、ストリーミングで様々なショーやアコーディオンの授業を配信してきた。「私の活動の大半は教育であり、様々な地域に住んでいる人々に向けてオンライン上で授業を開催してきました。」さらに、かの有名なレオン・ヒエコの名曲「トドス・ロス・ディアス・ウン・ポコ」を10人のチャコ州出身のミュージシャンたちと演奏する動画「チャコ・スエナ・ビエン」にも出演している。https://www.youtube.com/watch?v=ivai-wMoI7w
その他にもモンソンは「自分の母国語」と称するチャマメの普及活動にも熱心で、州の中等教育の音楽の授業に取り入れるよう働きかけている。「チャマメはもっと世に広めるべきものであり、実際に少しずつ成果が出てきています。今でも、このプロジェクトに多大な貢献をする素晴らしいアーティストや詩人がたくさんいます。」
”チャマメのさらなる普及”を目指した活動は多くの若者に影響を与えている。「マリオ・デル・トランシト・ココマロラ、イサコ・アビボル、アントニオ・タラゴーロス、エルネスト・モンティエル、詩ではラモン・アジャラ、リノ、マンクエジョ、テレサ・パロディやコキ・オルティスなど、過去に成し遂げてきた先輩たちを見習って、私たちはライヴで音楽と踊りを伝統的なアンサンブルで人々に届けています。」
ルカス・モンソンの音楽は、主に感受性に訴えかける音感に特徴があると言える。リトラル地方の精神が反映された壮大で色彩豊かなこの地域はあらゆる音楽に影響を与えてきた。だからこそ、彼が作る新しい作品には、パンデミックという不測の事態が起こっている状況下においてもこの生態系の影響が色濃く反映されている。「私は一連のつながりを持った作曲活動に取り組んでおり、リトラルの歌集を聞いたり探索しています。アコーディオンは自分自身を表現する一つの手段であり、内なる世界に光を当ててくれます。様々な音楽の道を旅することができますが、チャマメは言うなれば故郷に戻るような感覚です。新しいアルバムに関してはまだはっきりと決まっていません。私たちが置かれているこの難しい状況下で、まずは同じ道を志す音楽家とともに今後のプロジェクトについてさらにアイデアを深めていけたらと思っています。」
楽曲の視聴はこちらから:https://spoti.fi/2D8nJvl