22.Jul.2020

カフェ・ビニロの新しい試み「ビニロ体験」

コンサート・ライブ配信

カフェ・ビニロの新しい試み「ビニロ体験」

6月末頃のことである。感染拡大が続き、普段ならその場にいることで楽しめるという活動ができず、人々は皆、インターネットのオンラインによって音楽を聞いたり映像を見たりしていたが、そんな中で、カフェ・ビニロによる「ビニロ体験」という、とても面白そうな催しを見つけた。

今日私達が直面している状況は、世界的にも大部分の人々が抱えている状況でもある。そして、これから慣れていかなければならない「新しい生活様式」のもとで、様々な提案や試みが出てきている。さて一体、それらの間にどんな違いがあるのだろうか?
思うにそれは、自身の流儀を持っているかどうか、という点だ。つまり独自性があり、個性を保ちながらも文化を守り、かつ上昇志向で変容していくということ。これがカフェ・ビニロ初の在宅コンサートのライブ配信で楽しませてもらった、ビニロらしい特徴と言えるだろう。

「ビニロ体験」とは、カフェ・ビニロが選出したミュージシャンによるライブストリーミング・コンサートへの視聴参加で、参加者はブエノスアイレス市内に限定されている。なぜなら洗練されたワイン酒蔵のセレクト・ワインとおつまみが、ライブ開演の数時間前に宅配で自宅に届くからだ。今回私の元に届けられたのは、トゥクマン州の高地にある酒蔵の赤ワインと、定評あるカフェ・ビニロ自慢の様々なチーズの盛り合わせだ。

カフェ・ビニロの新しい試み「ビニロ体験」

ライブ開演前、まるで一種の儀式のように私は居場所を整えた。初期の頃からよく知っているカフェ・ビニロに、いつものようにその場所に居るかのように、ワインの栓を抜き、チーズのおつまみを取り分ける。照明を暗くして、まるでステージの正面の席に座るように画面と向き合う。

開幕。招待主であるカフェ・ビニロのテレとエドゥアルドが現れ、そしてまるでカフェ・ビニロで一緒に集っているかのように、視聴している参加者たち全員の姿が見えた。皆、いつもの温かい雰囲気を楽しんでいる。一緒に客席にいて、一緒にわくわくして演奏を待っているように思えてくる。

アルカ・デ・トロンボーン酒蔵のマネージャーであるピア・アルヒモンが、酒蔵の興味深い逸話を話してくれたり、「シエテ・バカ」七頭の牛という名前のワインについて説明してくれたので、私達は届けられたその銘柄を味わい深くテイスティングしつつ、解説に耳を傾けた。

カフェ・ビニロの新しい試み「ビニロ体験」

今宵の主役はアルゼンチンの歌手であり作曲家でもあるジョルジナ・ハッサン。「家でのコンサート」は完璧で素晴らしかった。在宅という形式が、より寛いだ場所から、アーティストの親しみやすい素顔を見せてくれる。例えば彼女の幼い娘、ビオレちゃん。ビクトル・エレディアの曲『昇れ、昇れ愛の旗』を母娘で歌って、私達を大いに楽しませてくれた。その曲がこちら:

カフェ・ビニロについて

ブエノスアイレス市パレルモ地区にあるカフェ・ビニロは、コンサート会場を兼ねたカフェテリアである。2009年6月にオープンして以来、いわゆるワールド・ミュージックと呼ばれるポピュラー音楽の代表的な場として、位置付けられてきた。

毎晩、タンゴやフォルクローレ、ジャズ、そしてシンガーソングライターなど、ブエノスアイレスの都会で聞かれる多くのジャンルのコンサートを催し、整備された音響と温かい雰囲気で、カフェ・ビニロならではの音の旅を聴衆に提供している。

独自の調理部門とプロダクション部門のプロたち、およびミュージシャンらによるチームが率いるもと、完備された技術機械と一流のオペレーターが配置されたコンサート・カフェ形式が構築されている。

カフェ・ビニロの新しい試み「ビニロ体験」
"Cribas" - Live in Café Vinilo

またカフェ前部、入り口付近のスペースには、レコードの本格的な音質で音楽が聴けるレストランがあり、写真や造形芸術などの多様なアート作品が展示されている。

カフェ・ビニロの新しい試み「ビニロ体験」

当初から目指していたのは、コンサートという機能において、アーティストと聴衆が共にあるために適した環境作りだった。まず第一に音楽への配慮と敬意、そして心のこもった親切な対応をモットーにしている。

カフェ・ビニロの新しい試み「ビニロ体験」

オープンから僅か数ヶ月で、カフェ・ビニロは音楽愛好家達だけではなく、企画を実現する場としてプロデューサー達にも注目されるようになり、ブエノスアイレス市ジャズ・フェスティバルやポルト・アレグレ・フェスティバル、またはその他多くの音楽イベントの会場として選ばれるようになった。

これからもカフェ・ビニロは音楽の新たな道を私達に提供してくれることだろう。2020年7月、「新しい生活様式」のもとでこのような素晴らしい体験が、続々と開催されていく予定である。