23.Dec.2020

お釣りとアルゼンチン的発想力

もらって嬉しく地球に優しい

お釣りとアルゼンチン的発想力
Photo Ecocuyo

小銭が足りないという問題は、アルゼンチンではいつものことである。それは特にこの数十年の間に、日常生活において頻繁に起こり、時には人を笑わせ、時には人を怒らせてきた。最初は駄菓子などを販売するキオスコの店で、小銭不足により客に釣り銭を渡せない場合に、飴を釣り銭代わりに提供したのが始まりである。思いがけない代替品かもしれないが、ごく僅かな額ではあるし、ほとんどの客は、小銭分の飴を受け取るほかに仕方がなかった。よく知られたこんな台詞もある。
「小銭の代わりに飴をいくつか渡します」

このやり方は少しずつ広まり、ついには定番となった。駄菓子を取り扱う部門がある商店ではみな、小銭のお釣りの代わりに飴を提供し始めた。この対応に疑問や不満を抱く客たちは、釣り銭代わりに受け取った飴をコツコツと貯めて、その店で買い物をする際に代金として支払おうと試みた。しかし、店側はお釣りを飴で返すくせに、飴による支払いは拒否するのである。

そうした状況は、Entesという消費者を守る機関に、多数の苦情やクレームが寄せられる結果となった。最終的には2004年12月に、お釣りを切りの良い金額にするという法律が公布された。これは店側が返すべき釣り銭を用意できてない場合、客にとって有利であるように金額の端数を切り捨てて、切りの良い数字にするという法律である。小銭の代わりに飴で返す場合は、飴製品の儲け分を差し引いたコストで計算しなければならない。そうでなければ、飴の購入を無理強いしているのと同じことだからである。

いずれにせよ、今日でも、多くの店が「飴でのお釣り」を用い続けている。これはもう、すっかりアルゼンチンの習慣になってしまい、飴を受け取る人もいれば、拒む人、抗議する人もいる。

それぞれの立場はともかく、2019年頃から、ユニークな発想と愛嬌のあるやり方で顧客を大切にする店が出てきた。2020年の今年、ある農園(鶏卵販売事業)が「エコお釣り」という独自のエコロジーなお釣りを製造している事を知って、驚いた一人のユーザーが嬉しそうにソーシャルネットワークでそれを語った。 「エコお釣り」とは実際にどんなものかというと、蒔いて育てるための種を小さな袋に入れたもののことである。アルゼンチンの小銭不足と釣り銭の問題を前に、好肯定的なコメントが多く書き込まれ、話題となったのである。

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