17.Mar.2020

ラ・プラタ川のドラード「川の虎」との出会い

ウィルマル・メリーノ

ラ・プラタ川のドラード「川の虎」との出会い

ドラード種(学名salminus brasiliensis)は、ゴールデン・ドラードとして国際的に知られており、ラ・プラタ水系でもっとも獰猛な魚です。そのアクロバティックなジャンプは、鯰のように鋭い髭で口の中に刺さってしまった獲物を吐き出す自衛機能だけでなく、例えば、小さな滝のような障害物をジャンプして乗り越えることにも役に立ちます。オレンジ色と赤みがかった色彩の曲線が、美しく宙に弧を描くジャンプは、釣り人にとって、ドラードの比類なき勇猛さの反映であり、ゆえにアルゼンチンでは「川の虎」という称号がこの魚につけられています。

ドラードは、アルゼンチン北部の沿岸地帯(ここがドラード釣りの主要地方)や、サルタ州とサンティアゴ・デル・エステロ州に棲息しています。草原に広がる水系は数千キロメートルに渡って続き、ラ・プラタ川へと合流しています。この川は河口が最大で300kmに達し、川幅が世界で最も広い川として知られています。

まさしくそのラ・プラタ川に、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの港があり、普通は小型から中型までの大きさのドラードがやって来ますが、時には重さ10キロに近い大物が釣れることもあります。しかし当然ながら、35,000K㎡もある広大なラ・プラタ川で、それを見つけるためには、どこでどのように探すのかという知識が必要です。そのためには、優れた釣りガイドの存在が物事をはるかに容易にしてくれるでしょう。実質的に、1年でもっとも寒い季節にはおらず、9月から4月の間、つまり南半球では春から夏がドラード釣りの時期です。ナマズやウナギやボガを食べないわけではありませんが、通常、主に餌となる種であるサバロ(Prochilodus lineatus)が通る川の溝や石の間、防波堤で待ち伏せします(サバロ、ボガはラ・プラタ水系に棲息する魚)。ドラードは大食いなので、自然の餌を使うほか、ルアー(疑似餌)やフライ(西洋式毛鉤)での釣りに理想的です。

ブエノスアイレスでは、釣りクラブやポルテーニャ(ブエノスアイレス市の、という意味)の河岸、埠頭や港でドラード釣りができますが、できれば魚群のポイントを船で探しに行くのがお勧めです。発電所からの暖かい水流の出口や、デルタの河岸の浸水した島々の小川、葦草がうっそうと茂る場所や水路の底に、大きな獲物が潜んでいます。流域が広大に広がっているため、釣りポイントの明確な参考となるものが非常に分かりにくいので、この巨大な「岸のない川」で釣り人の期待を外さないよう、釣りガイドたちは非常によく研究をしており、夜明けの最初の光から日没まで対応しています。

今回はミットレ運河を行きます。浚渫(しゅんせつ)された標識のある水路で、この運河により、ラ・プラタ川に注ぐ大きな河川に海外の大型船舶もアクセスすることができます。ここでは水深が深くなり、とても良い個体が釣れます。ブイを用いること、そして底では餌として大きなウナギを使うこと、この2つの手法を用いて釣りをします。

ラ・プラタ川のドラード「川の虎」との出会い
Photo by ウィルマル・メリーノ
ラ・プラタ川のドラード「川の虎」との出会い
Photo by ウィルマル・メリーノ

ドラードは確固たる攻撃をしてきます。釣り鉤にかかり、興奮して戦闘開始すると、激しいジャンプをし、釣り糸を断ち切ろうとして、竿や障害物に挑みかかかって来ます。釣り鉤を外そうと船の下をダイビングします。こうした釣り方式では、多くの場合大きな個体が釣れますが、ただし沿岸地方で大きな魚を釣るためにはトローリングの練習が必要です。つまり船の動きと共にルアーを引き摺ります。

ラ・プラタ川のドラード「川の虎」との出会い
Photo by ウィルマル・メリーノ

2つの国を分けているラ・プラタ川は、アルゼンチン側ではパラナ川から運ばれてきた堆積物が溜まるため水が濁っており、ウルグアイ側ではより透明度があります。きれいな水は魚にとっても視覚が良くなるので、ルアーやフライを用いた釣り方式が適しています。ただしドラードを釣りに行く時には、いくつかのルアーや、フライキャストを練習するならフライの一式も、必ず持って行くことをお薦めします。なぜなら、もしドラードの群に遭遇した場合、餌が選択肢のない状況となり、ドラードは競争意識を燃やして、近くを通るすべてを攻撃するからです。時には、一匹のドラードをまさに釣りあげようとしているルアーを、別のドラードが狙ってくることもあります。

ラ・プラタ川のドラード「川の虎」との出会い
Photo by ウィルマル・メリーノ

ドラード釣りに出掛けるにはブエノスアイレスから行くことができます。正確にはブエノスアイレス市から30km程度に位置するサン・フェルナンドやティグレで、そこはラ・プラタ川の河岸にあり、釣り観光の水上活動の中心となる町です。
もしドラード釣りの機会があれば、ためらわずにそのチャンスをつかんで下さい。アルゼンチンはスポーツフィッシングを普及すべく、国際観光フェアの催し等でその宣伝をしていますが、そこに来る問い合わせの67%は、この「川の虎」についてです。ドラードは国を代表する魚なのです。

 

釣りガイド

ブエノスアイレス:カルロス・カピターニ 日本から+54 9 11 156-9324862
サン・フェルナンド:ワルテル・コロルク 日本から+ 54 9 11 155-2213467
ティグレ:エルナン・ドゥソウト 日本から+ 54 9 11 153-5643208

ラ・プラタ川のドラード「川の虎」との出会い