UFOの町
カピージャ・デル・モンテ
数年前「世界一UFOにやさしい町」を取材したいというテレビ局のディレクターからメールが来た。アルゼンチンにそんな町があっただろうか、と一瞬考えたが、アルゼンチン中部にあるパワースポットでも有名な「ウリトルコ」と言う山がふと思い浮かんだ。その麓にある町が「カピージャ・デル・モンテ」。
ウリトルコ山は古くから聖地として崇められており、各地から自然のエネルギーを享受するために、様々なカルト団体が巡礼に訪れることもある。2011年11月11日を祝うため、その山に1万人以上が集まった経緯があり、また2012年には、マヤ・カレンダーの日付が終了するということで、多くの人が訪れるおそれがあり、一時入山が制限されたこともある。
カピージャ・デル・モンテの中心街を散策すると、宇宙人の人形が店舗の前に飾ってあるのを見かける。またレストランのメニューには、エイリアンの絵が書いてある所もあり、お土産屋には、宇宙人のぬいぐるみ、キーホルダーやマグカップも並んでいる。
UFOに限らず、スピリチュアリティにも関係の深いこの町には、パワーストーンやお香と一緒に、瞑想やヨガレッスンのパンフレットなどが店においてあり、壁にも貼ってある。週末や連休になると国内から多くの瞑想グループが訪れるアルゼンチンのパワースポットの名所でもある。
アルゼンチンのメイン広場には、必ず独立に貢献した政治家や軍人の銅像が立っているが、ここではなんと円盤が設置されている。「UFO情報センター」に行くとUFO関連の雑誌や本と出合える。ナイトツアーでは、飛行物体を呼ぶという町の名物おじさんが同行してくれる。そして、6年前から、1月末から2月の頭にかけて「宇宙人フェスティバル」が開催され、地球外生物のコスプレパレードが行われる。
でも、なぜこの1万人足らずの町はこんなに宇宙人にやさしいのか?1986年1月9日、郊外にあるパハリージョ山の地面に大きな円形マークが現れた時、「UFO」の伝説がこの町に誕生した。
80歳のおばあさんとその娘、そして11歳の孫が家にいた時、眩しい光が窓から入ってきた。翌朝、彼女は超巨大UFOの痕跡が、焦げたように地面に残されているのを発見した。最初に目撃したあの孫は「よく見ると飛行物体が降臨し、そのまま着陸した」と語っている。この事件がメディアに知られ、カピージャ・デル・モンテは徐々に観光名所になり、国内そして外国からもスピリチュアルそしてUFO的な体験を求め、多くの人が訪れるようになった。今では、町の多くの人々が「飛行物体」を目撃しており、それは日常茶飯事のようだ。
一方、ウリトルコ山や周辺の山では、石英や長石、トルマリンなどの鉱物資源が埋蔵されていてプラズマ現象が起こるとも言われている。夜に光る物体はこの現象かもしれない。しかしながら、この町には特別なエネルギーが感じられる。ここに来る人たちはそれを求めて来るのだろうか。
Information
ウリトルコ山(標高1979m)は、頂上まで毎日午前6時から12時まで登ることができる。入山有料。
http://www.cerrouritorcoam.com.ar/
アクセス:ブエノスアイレスから880㎞、空路でコルドバまで1時間、そこから陸路で2時間
カピージャ・デル・モンテ 動画
小木曽モニカ(Mónica Kogiso)
アルゼンチン・ブエノスアイレス州生まれ日系2世。ブエノスアイレス在住。モンチメディア代表。取材・撮影コーディネーター、翻訳家。サルバドール大学で観光学卒、大阪外国語大学に留学。アルゼンチン政府公認旅行免許取得し、アジア専門旅行会社で日本行きのパッケージツアーを作成・販売担当。日本に関するイベントのプランニングや企画も行う。パンアメリカン日系人協会(カナダからアルゼンチンまで含まれる日系人のネットワーク)理事やアルゼンチン日系センター会長を務める。
Email: monchikogiso@gmail.com